4月中旬から集中して執筆を続けていた、自身4冊目となるKindle本がようやく完成しました。

今回は、これまで取り組んできた「音を視る」という活動の延長線上にありながら、さらに一歩踏み込んだ内容になっています。

テーマは、「物理と知覚から主観を推測する」という試みです。

私たちが「音」や「光」として受け取っているものは、本来、周波数や振幅、波長といった測定可能な物理現象に過ぎません。

そして、それらの情報は感覚器官を通じて脳へと届けられ、「知覚」として統合されます。

しかし、その先にある「美しい」「懐かしい」「切ない」「心地よい」といった体験は、一体どこから生まれているのでしょうか。

同じ景色を見ても、同じ音楽を聴いても、人によって感じ方は異なります。

そこには、本人にしか観測することのできない主観の世界があります。

哲学では「クオリア」と呼ばれる領域です。

本書では、音楽解析や機械学習、認知科学、心理学、神経科学などの知見を横断しながら、客観的な数値やアルゴリズムという「外側の物差し」と、人間の意識という「内側の宇宙」を結び付けることを試みました。

もちろん、主観そのものを直接測定することはできません。

けれども、物理世界と知覚世界の接点を丁寧に観察していくことで、その輪郭を少しずつ浮かび上がらせることはできるのではないか。

そんな問いから始まった探求です。

振り返れば、音楽制作を始めた頃から私はずっと「なぜ人は特定の音に心を動かされるのか」という問いを追いかけてきたように思います。

その意味では、本書は単なる分析本というよりも、30年以上続いている個人的な探求の中間報告なのかもしれません。

意識とは何か。

知覚とは何か。

そして、人それぞれが持つ唯一無二の主観とは何か。

本書が、その不思議な内なる宇宙を旅するための一冊になれば嬉しく思います。