懐かしのオルターエゴ!
昔、このレーベルの作品を血眼になって買い漁っていました。
サイレンスのシーケンサーでポチポチと打ち込む、プラック音の符点八分音符ゲートシンセ。
あれは、プログレッシブ・トランスの代名詞でしたね。
16分音符3つ分(=3/16拍)は、4/4拍子(16/16)を構成する基本単位ではありますが、16の約数ではないため、単純な反復では拍頭と一致しません。
3/16拍ごとに音が鳴り続けると、リスナーの脳は、キックが打つ1拍目、2拍目といった拍の区切り(オンビート)を認識しつつ、符点音符の音は常に裏拍(オフビート)で入ってくるように感じます。
その「ほんのわずかなズレ」が、強烈なグルーヴと高揚感を生み出していました。
バリエーションとして、よく使われたのがプラック音の符点四分音符です。
符点四分音符(3/8)のシーケンスは、4/4拍子(4/4 = 8/8)の上で鳴ることで、3:4のポリリズム的な錯覚を生じさせます。
3拍子の揺らぎは、厳密な四つ打ちから解放される感覚をもたらし、酩酊感や深い陶酔を誘発します。これはトランスが目指す精神状態に直結する効果です。
他には八分休符からの符点八分音符なども王道でした。シーケンスの直前に空白(休符)が入るため、次のプラック音のアタックがより強調され、クリアで空間的な響きを伴って聴こえます。
キックの打つ瞬間に音を出さないことで、リスナーの身体は休符の間に「次の音を待つ」という緊張状態に置かれます。そこに符点八分音符のズレたグルーヴが飛び込んでくることで、陶酔感の爆発力が増していたように思います。
こうした規則的なズレが生むドライブ感を際立たせるコントラスト。
つまり、ポリリズム的な錯覚こそが、聴覚的な快感を生み、陶酔感を高めていた最大の要因だったのだと思います。
身体は四つ打ちのキックでノリ続け、耳は符点音符による反復的なズレを追いかける。
この身体と耳の二重構造が、トランス(=陶酔状態)へと誘う、最もシンプルで、そして最も強力なトリガーだったのではないでしょうか。
かつて、「トランスはディレイとリバーブで作れる」といった話を聞くたびに、強い違和感を覚えていました。
陶酔感の素は、あくまでも周期の異なるリズムが生み出すズレにある。
私はずっと、そう捉えていました。
私の周りにも、ミレニアム前のダッチトランスから語れる人が少なくなってきたので、参考までに、ここに書き記しておきますね。
Akihito Kimura